あこがれ

 

東京にもどると、そこらじゅうが秋の気配で、暗くて、立ち込める甘い匂いにくらくらするほど苦しくなった。

自分の全てを差し出して、あげられるものがないと離れていかれることがこわくなる、そんな私だから、この四日間は相当に心に負担がかかっていたんだ、と終わってみて初めて気がついた。

今までだったら始まることにわくわくするのに、京都駅でとてつもなく心細くなって本屋に逃げ込んだこと、私のなかのどこかの部分がもう気がついてしまっていたんだな

 


気がついてしまったことが寂しくて、心が冷え冷えとしているのと同じくらいに、でも清々しく晴れる予感だけはしている。

目まぐるしく変わる、この数年で内面をじっと見つめて、環境を変えてきたけど、信頼した好きな場所でさえ、そこにはずっといられなくなるような気がする。

 

きっとそのくらい、私にはやりたいこと、向かうべき方向があるんだ。もっともっと素敵な予感と出会いたい。魅力的な事象と会話に出会いたい。

違和感を大事に、すっかりお別れするということは必要ではないのかもしれないし、自分の中での最適を見つけていく季節だ。憧れはずっと持ったまま。